今年のまだ寒かった頃、よく行く古本屋での事。「何か、何か。」と物色していると、何故か目に付いた本があった。と言うのもそれは、今迄に何度となく目にしており、今更どうして気になるのか不思議なぐらいであった。 
一時の気の迷いで衝動買いするのには、かなりの量になる本[シリーズ物]であったので、その日はとにかく帰宅した。2〜3日すれば頭も冷えるだろうと思っていたのだが、1週間程後に再び足を運ぶ事となった。 
前回来た時より、巻数が増えており自己主張するが如く有様であった。まずい事になることと、解りつつも
その本を手に取ってしまった。思えばそれは二度目の事であった。
 自分の年齢が現在の調度半分の頃。その本の1巻目が創刊されていた。以前にその人の著作は1冊だけだが
拝読していた。正直、内容はあまり理解出来なかったのだが、興味深い話だったのでよく覚えていた。 
そんなわけで、その時も手に取ったのであった。単行本であったので、値段はそこそこしたのだが手が出ない 
価格でもなかったのでと思いレジにいきかけたのだが、本の帯に書かれた一文が私の足を止めさせたのだった。
「~2006年にかけて1年に1冊ずつ書き下ろす予定です。」 意味は解るが理解はできなかった。           その時、1992年。先見性を欠くかもしれないが、14年先の2006年の事等全く現実味の無い話であり、個人的にはSFと同義語である。そんなSF的な年代までとてもではないが、読んでいられない。大体その時点でまだ翌年
何処で何をするかさえ決まっていない身分であった。「SFには、つき合えない」そう思い書店を後にした。
 そして、2006年など随分と過去になった2015年。SFとは無縁な現在、本屋にて過去と変わる事無くページをめくる事しばし。ここで私が如何なる行動をとろうが、悲惨もなければ破滅もありえない。越える事にした。今になって思えば「あの時から読んでいればとは、考えはしないし、人生を変える本であったともおもいもしない。
しかし、敢えて言えば今回の件は自分にとって「やらなければならない」事であったのかと。そういう事をうやむやにしてしまうことなど無理な話なのではこじつけて考える次第である。で、こじつけついでにもう一つ。
そのシリーズ、文庫本で別巻を含めて自分の年齢と同数であった。そんなわけで、年がプラス1になるまでに
読了してしまおうとの考えでここ数ヶ月を過ごした。先日、1ヶ月少々を残し目標を達成にいたった。
 さて、次はと考える今日この頃である。


                                                         工房 永田