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京都生まれの京都育ちで、嵐山に住んでいますと、他府県の方にお話しすると、「良いところにお住まいですね」と言っていただくのですが、それは観光地としてのイメージが浸透しているためで、確かに風光明媚な所もありますが、実際は、京都市の西の端、京都盆地の縁部分といえるような所です。特に私が住む辺りは、すぐ裏手に山が迫っているような場所で、そのような環境なので、当然自然あふれる状態で、温かくなると色々な虫などが勝手に家の中を飛び回ったりしています。
 そんな、環境の中で、数年前から一匹のヤモリが住み着きました。夏の間、夜になると、どこからともなく表れて、ガラス窓に張り付き、室内の光に誘われてやってくる蛾などを捕食するのです。そして朝になるとどこかに帰っていくというパターンを繰り返します。それが夏の間続き、秋になって涼しくなると来なくなる。今年の夏も例年と同じようにやはり、現れて虫を捕食していました。最初はちょっと気持ち悪かったのですが、虫を食べてくれるおかげで、家の中へ虫が入ってくる事が減り、助かっています。ヤモリは「家守」とも書き、家の守り神のように思えて、そうなって来ればなんとなく愛着がわいてきて、家族の誰ともなしに、このヤモリに「ヤモ吉」という愛称を付け、餌が獲りやすいように、カーテンの一部を空けて光が漏れるようにしたりとか、窓の開け閉めの際に脅かさないように気を付けたりするようになって、それとなく気を配るようになってきました。そして、夏の始まりに再会を喜び、秋になるとまた来年会えることを願って別れを惜しむという、生活が数年続いています。ヤモリの寿命や性別など、個体差がよくわからないので、もしかしたら、「ヤモ吉」でなく「ヤモ子」なのかもしれませんし、もう数世代にわたっているのかもしれませんが、取り敢えず、うちの家族にとってはこのヤモリは「ヤモ吉」さんで、かけがえのない隣人なのです。今年ももう少しでお別れ、また来年会えることを楽しみにしています。
                                                       京都工場 井上